ARTIST
SENDA REIKO
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陶芸家千田 玲子
SENDA REIKO・Ceramic artist
塊りの土から浮かぶイメージ、それを素に作り出される作品は力強い生命力にあふれ、ダイナミックでありながら静かな優しい風情を併せ持つ。「土の持つ良い表情を見てもらいたい。」
自分の作品は“土の彫塑”かなと思っている
「台皿」
陶芸といえば、一般的には実用としての“工芸”の側面が大きい。皿、碗、花器などをまず思い浮かべる人が多いだろう。対して千田は、自分の作品の特徴について次の様に述べている。
「オブジェは土の塊からひとつひとつイメージし、まず全体のフォルムを作りそこから不要な土を除いていく『刳り貫き(くりぬき)』という技法で、土そのものの存在感や美しさを生かす様に意識して制作。器もやはり、土の塊から叩いたり引き伸ばしたりして表情を引き出し、用を生み出している。そんなところから自分の作品はどちらかというと“土の彫塑”かなと思っている。」
千田作品に接した方の多くが、この言葉に頷かれるのではないだろうか。
アフリカに触れて
小中高と美術の授業を通して素材と関わる楽しさに触れ、その中でも特に木彫レリーフに夢中になった。大学時代には、本や資料を通してアフリカの厳しく美しい自然や様々な先住部族の生活様式に触れ、生活の中で育まれた宗教観、価値観の多様性に感銘を受け、表現への動機づけとなる。原始美術に惹かれたが、やりたかった木彫は環境が整わず、陶芸を始めることとなる。
アフリカへの思いは強くこれまで3回訪れている。初期に制作した器に『カスバの盃』というものがあり、砂漠の中のオアシスをイメージしているそうだ。
表情を表現する
陶芸は基本、土の柔らかい段階で形を作り、乾かす過程で削りや装飾等の手を入れていく。千田は数年前から、『泥漿(でいしょう)』作品に取り組んでいる。
「土を水で溶かした泥状のものを泥漿と言うのだが、硬い表情を出したい場合は水を少なく、柔らかい流れや垂れを表現したい時には水を多めにする。泥の水分量で表現が変わる。私の作品は絵を描くでもなく、デザインを描いてその通りに作るのでもない。土があって、作りたいテーマがあり、土から感じたものを形にし、そこに表情を入れたり入れなかったり。作る時に存在を殺さない様に気を付ける反面、美しく作りたいとは思わないかもしれない。」
「泥漿(でいしょう)作品」
だが、生み出される作品は、素材自体の存在感を生かした、力強くも穏やかで魅力的なものであり、それはまさに美しい。
ベースとしての器
花器と言う代わりに「花緑の器」という言葉を使う。蔓・枝・苔など花以外の為にも使ってもらいたいからだ。実際に展示会では蔓が効果的にアレンジされている事があるが、植え込みや生けこみは本人がやっている事が多い。色々な植物の生活スペースとしての器を作っている。
実用的な「食器」を作る時には、容れる素材を想像し使う人の立場に立って使いやすさを追求している。千田の食器は手触り、重さ、口当たり、手入れのしやすさ等評判がいい。
「触って使ってこそいいなと思えるものが作りたい。器に関していえば引き立て役に徹したい。料理やそこにのるものが一番活き活きと又、美味しそうに見えるような器を目指している。」
まず素材や料理があって、そのベースとしての器作り。色は色味程度、実用面や艶として必要と思う釉薬も抑えめに、料理を引き立たせる塩梅を考えて作っている。
「器」
ひっくり返したり
「使い方の提案はするけれど、色々なアイデアで使ってくれるのは嬉しい。色々楽しんでほしい。作る時に、置いたり壁に掛けたり色々な向きで使えるものが好きで、よく作っている。作る時にもひっくり返したり、出来た作品を一部潰してみたり、様々な角度で眺め楽しみながら作っている。楽しい器が作りたい。 近年は自分で焼いたガラスも素材のひとつとして取り入れている。ジャンルを超えた挑戦もしていきたい。」
千田玲子は楽しみながら、楽しませる作品を生み出し続けている。
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