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2022.05.31  個展を訪ねて

漆芸家井ノ口 貴子

井ノ口貴子作品1

会場:銀座・ギャラリーおかりや
開催日時:2022年5月25日(水)~30日(月)

井ノ口貴子、初の個展を鑑賞してきた。
井ノ口貴子作品2井ノ口貴子、初の個展を鑑賞してきた。 エレベーターの扉が開くと直ぐに重みのある光を放つ赤い椀が目に入ってくる。その穏やかで優しい光に導かれて一気に『和』の世界に引き込まれる。だが、銀座のど真ん中というギャラリーの立地同様に、伝統を感じると共にスタイリッシュさを強く感じる。期待の高まりとともに目を巡らせれば、ペンダントヘッドから長盤まで、多様な井ノ口作品の静謐な佇まいは会場の清潔感と相まって品の良さを色濃く漂わせる。

案内状の写真にもなっていた菓子皿は、表面の刷毛目が光の当たる角度によってさまざまな表情を見せる。形状自体も柔らかなうねりが特徴的で、自在な造形がおもしろい。来廊されていたお客様の「壁に並べて掛けても素敵だ」という意見に同感。
ぐい吞みは、それぞれ趣の異なるものが数点。内底に金が散らしてあるものは金箔を貼った上に透き漆を塗り重ねているそうで、年月を重ねた同様のぐい吞みを見せてくれたが驚いた。色合いが何とも言えず良い風合いに変化している。これは漆を使った器の魅力のひとつといったところか、どれも実に酒が旨くなりそうだ。やはり良い器とは長く付き合う楽しみがあるのだなと再認識させられた。
片口は今回初めて見たが、直線的なもの、曲線を意識した丸みを帯びたもの、どれも大きさといい手にしたときの馴染み具合といい、スタイルだけではなく、しっかりと使い勝手を考えて作られている。
組み立て式の箸と箸入れ、小皿、折敷、ペンダントヘッド、眼鏡ケース、と見ていくと小ぶりな箱が数点並んでいる。中央に小さい点の模様があるものが気に入った。蓋を開いてみれば、底面に金箔の模様が。この箱に何を入れるのか考えるのもまた楽しい。

井ノ口貴子作品3

会場のいちばん奥には日本伝統漆芸展で入選した二作品、長盤が展示されている。石膏で型をとって波模様を乾漆技法で表現した作品は、何層にも漆を塗り重ねて成形されている。潔く黒一色で描かれた波に触れてみると起伏の表面はとても滑らかで、硬い。そして、盤の厚さからは想像できないほど軽い。人差し指1本で持てるほどで、乾漆作品の特長である軽さと丈夫さを実感する。この作品をベースに進化を目指して制作したのが最奥にある長盤である。裏に付けた脚の位置に工夫を凝らしたという。が、なによりまず強く感じるのは、作品の持つ勢いである。風を表現したかったというその文様は、すさまじい勢いで吹き上げる。
まさにこの個展を通じて井ノ口本人に感じた、作家としての意気込みを象徴する作品である。
その思いで制作される作品は、どんなものになるのであろう…、楽しみである。

井ノ口貴子作品4

漆芸家井ノ口 貴子  乾漆展開催

乾漆技法で表現できる生活を彩る器などを制作しております。この度、初の個展をさせて頂くことになりました。ご高覧頂けると幸いに存じます。

井ノ口貴子

井ノ口貴子作品

個展会場:ギャラリーおかりや

開催日時:2022年5月25日(水)~30日(月)
11:00~19:00(最終日/17:00)

作家在廊予定日:2022年5月25日・28日~30日

アクセス:東京都中央区銀座4-3-5銀座AHビルB2F

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